小野不由美 「屍鬼」を読んだ

庫版全5巻。
昨日読み終えた。


やっぱりパワーのある話はすごい。
全5巻、2500ページ余りをグイグイ読ませる。
人によって向き不向きはあるだろうけど、オレはドップリだった。


感想は、これは簡単には書けないなぁ。
巻末の解説を書いた宮部みゆき氏のように言葉を操れるなら書きようもあるのかも知れないけど^^;
実際のところ、あの解説を読んでもスッキリとはしないと思う。
あれは物語の一部分を抜き出して紹介してるのであって、読んだ人なら「うんうん」と納得しつつも、もっともっと他にも暗く重いものが心に残ると思う。
あ、別に後味が悪いって事じゃなく、考えさせられるってことね。


秩序とか倫理なんて言葉は知ってても、普段はいちいち意識しないで生活してる。
意識しないで済むシステムになってる。
習慣っていうのもそうかな。
じゃあその秩序、倫理、習慣って誰が作ったんだろう。
誰の都合で?なぜその形で必要だったのか?
そこには宗教なんかも関わってくるね。


その「当たり前」から外れたらどうなんだろう。
外に出てしまった人はどうなって、何を思うんだろう。
それは絶対的な悪なのか?本当に?
正義って何なんだろう。


生きるって何だろう、死ぬって何だろう。
そこにも宗教的な思想が入ってくる。
神とは?仏とは?
何をもって“死”なのか。


家族や地域という集団の優しさ、強さ、厳しさ、絆、油断。
そして怖さ。
狂気。


これは読んでよかった^^


最後にちょっとネタバレ。
人狼となった静信は、きっと沙子と共に流浪してるんだろうね。
辰巳は死んだと考えるのが妥当なのかな?
それにしても、エピローグ的なあの部分、無くても良かったんじゃないかなと思う。
わざわざ「静信と沙子は生き延びてますよ」を表現するのは、ちょっとだけ余計ことだったように思う。
ぼんやりと闇に紛れて生きるのであれば、あの廃墟の場面からぼんやりと消えて欲しかったなぁ。
静信と沙子が生きていることと、外場村のその後を急いで説明するために、ゴチャゴチャしてしまった印象が残った。
いわゆる「説明台詞」的なものが多くて、それまでの物語の雰囲気が台無しになってしまった感がある。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


屍鬼」を読もうと思ったきっかけは、雑誌「ダ・ヴィンチ」でのインタビュー記事を読んだから。
十二国記」が完全版として新たに刊行されたのを受けて、小野さんの特集が組まれていた。
十二国記」は、ずっと前に興味があったのに読む機会が無くて、そのまま忘れてたんだけど、特集記事を読んで、この機会に読んでみようかなと思ったんだ。

ところが、別のところにも目が行ってしまったw
小野さんは、スティーヴン・キング氏の大ファンらしい。
オレもキングファンで、中学の頃からかなり読んできたから、そこにピクッと反応しちゃったんだ。

屍鬼」は、キング氏の初期の代表作である「呪われた町」へのオマージュとして書かれた作品である、と。

十二国記・完全版」は、これから徐々に刊行されていく。
屍鬼」は、すでに全巻が刊行されている。
ならば「屍鬼」を先に読んでしまおう、ということで読み始めたんだ。

いや、ホントにスゴかった。
敬意を表して、書棚のキングの列に一緒に並べよう^^

屍鬼(一) (新潮文庫)

屍鬼(一) (新潮文庫)